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2009年1月 8日 (木)

どこかおかしい派遣労働問題

製造業への派遣労働を解禁した結果として、今回の大量失業(派遣契約の打ち切り)があるから、製造業への派遣を禁止すべきだとの意見が大きくなってきています。毎度定見のない民主党執行部も早速意見を変えて、禁止することを支持するそうです。自民党はまだ少しは定見があるようですが、良くわからない「世論」なるものに押されてどうなるか分かりません。

派遣を打ち切られて路頭に迷っている方々に同情を禁じえませんし、どうにか対策を立てなければならないと思います。

ただ、そのことと製造業への派遣労働禁止問題とは別物です。製造業は繁閑に応じて製造に従事する従業員の数を変更する必要があります。米国では正社員であろうとなかろうとレイオフという制度で一斉に解雇しますが日本では正社員はガチガチに守られており、とても不可能です。

自分が製造業の経営者になったと考えてみましょう。派遣労働が禁止されるとどういう行動を取りますか? 正社員を増やして忙しいときに備えますか? そんな経営者は即刻クビでしょう。事業と慈善事業とは別物です。考えられる対策は需要が増えても正社員を増やすことはしないで、可能な限りの残業で対処し、それでも需要に応じられない部分は製造することを断念するでしょう。その結果、需要と供給の関係で必要以上に物価が上がります。また、派遣労働を使う海外の企業からの輸入を増やすでしょう。日本人の雇用は増えないで外国でその国の雇用が増加します。「製品の輸入+雇用の輸出」です。だとすると、誰でも思いつくことは海外に企業を自分で設立することです。つまり、日本脱出です。労働の質の問題等でこの流れは逆流している面もあったのですが(製造業への派遣労働の自由化がこれを後押ししていました)、元に戻るでしょう。発展途上国の労働者を教育した方がトータルでは絶対にコストが安くなることは自明でしょう。

これが現実です。あなたが考える程度のことは経営者も考えます。何も良いことは起きないのです。「正社員が必要以上に優遇されているために、派遣社員が犠牲になっている。考えるべきは正社員保護規定の緩和である」との見解を述べている有識者がいましたが、正しい面を捉えています。もぐらたたきで闇雲に出たものを叩くというアホな対策のみを行うと必ず予想外の悪い面が顔を出します。人間なんて規制の結果を予測することはできないのです。良い面が皆無とは言いませんが、反作用が非常に大きくなります。言うまでもなく、その最たるものは共産主義です。マルクスは見事に中央集権による、つまり、規制による国家運営の将来をばら色に書いて見せましたが、結果はご承知の通りです。

日本から製造業を駆逐すると、100%間違いなく日本は崩壊します。解決策を明確に示すに到りませんが、少なくとも言えることは、現在の規定はそのままにして、現実に職を失った方への生活の手当てをすることで対処するべきだと思います(馬鹿げた2兆円の一部を当ててもよいでしょう)。そして、長い目では、正社員の解雇を今より易しくすることでしょう。民間にそのような痛みを求める以上は、官僚もおなじであり、人事考課を行い競争させ出世に差をつけ、仕事を減らした人間を高く評価し、かつ、減った仕事に対応する人員を解雇する仕組みを導入すべきでしょう。

長くなりますが、英国の例を紹介しましょう。1980年代の始めのサッチャー首相が就任した頃の話です。外国為替管理法という貿易や資本取引を規制する法律(日本にもあります)を廃止しました(改定ではなく廃止です)。その結果、中央銀行(英国では大蔵省ではなく中央銀行が担当)でその法律に基づく管理を担当していた人員が不要になりました。結果はどうなったでしょうか。全員解雇です。ある日、ロンドンで働いていた小生のもとに電話があり「こちらは中央銀行(イングランド銀行)であるが、人を採用する気はありませんか。外為法の自由化で不要になった人材ですが優秀ですよ」とのことでした。これが無残に衰退していた英国の再生の始まりでした。今や、英国の一人当たりGDPは日本より上です。

(2009.1.8)

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