食糧自給?
日本の食糧の自給率は40%程度に過ぎないということで、政府もその向上に躍起になっています。それは正しいことでしょう。ただ、そのやり方が正しいかとなると大いに疑問です。
農業を保護することで食糧自給率を高めることができるというのは妄想です。もちろん、国民が今よりも遥かに高い食糧代を払う気があるのであれば別問題です。すでに、小麦には200%を超える関税をかけて小麦農家を保護していますが自給率は12%です。米は800%程度の関税をかけて自給率100%どころか余っているようです。つまり、農業を保護し(正しくは、農家を保護し、というべきでしょう)国民に高い食料を食べさせる気があれば自給率はドンドン上がります(小麦に関する限り、それでも12%に過ぎないということは、保護不足ということになりますが、これ以上の保護、つまり、国民負担はこらえて欲しいと思います。おそらく、徐々に自由化していくと逆に自給率が上がるのではないかと思います)。
保護をさらに強化すれば、全耕作面積の10%は耕作放棄地ですから、これも活用できます。しかし、国民のエンゲル係数(所得に占める食料費)は格段に上がり、従って、生活水準は格段に下がるでしょう。
農業を自立させながら、したがって、国民負担をできるだけあげない形で自給率をあげるためには農業に競争力をつける他はありません。保護が外された農業は自ら努力し競争力を付けてきています。何もしなくても税金が生活の面倒を見てくれるような産業が国民生活に貢献することはあり得ません。我々から税金という形で所得を奪い、それを農家にばら撒いているに過ぎません。もちろん、票が狙いです。
「米だけは100%自給するべき。食糧安保だ」という声が大きいです。そのことと800%近い関税をかけて国民に高い米を食べさせて良いのか、ということとは別の問題でしょう。海外に旅行して日本食を食べると殆どがカリフォルニア米です。美味しいでしょう? 本当に美味しいのです。しかも、安いのです。関税をかけないで、とは言わぬまでも、大幅に関税を下げても日本米の方が安くて美味しいという状態が普通の状態ではないでしょうか。そうあるべきではないでしょうか。
それでも米だけは別だ、という声も多くあります。ところで、原油は99.9%輸入です。国内で原油を0.1%生産しているのであるから、この業者を保護するために原油輸入に数百%の関税を掛けようではないか、という声は聞かれません(当たり前ですが)。何を言いたいかというと、皆さんはどうやって米を炊いていますかということです。電気炊飯器でしょう。原油の備蓄は90日程度です。安保という話をするのであれば、原油の安保の方が遥かに重要ですが、どうしたわけか米が対象とされています。有事の際は、電気は91日目には止まります。どうやって米を炊くのですか?
原油が間違いなく輸入できるように世界各国との友好を深め、かつ、原油代金の支払いに必要なドルを稼ぐことの方がもっと重要ではないでしょうか。国の防衛が確保されて、その後に食糧安保を考えるべきでしょうが、どうしたわけか食糧安保を叫ぶ方には国の防衛力強化には反対の人が多いようです。
農業の保護が不要だと言いたいわけではありません。ただ、競争力を付けるための政策が行われるべきであり、税金のバラ撒きで票を買うような政策は止めるべきではないか、ということです。「農業はつらい仕事だから誰もやりたくないにも係わらずやってくれている人を保護するのは当然である」という声もあるでしょう。しかし、新聞・テレビ等で報道されるものを見ると、農業をやりたい人は数多くいるようです。国の土地政策等がそれを阻んでいるようです。自由に参入できる環境を作った上で、農業保護のために許される国民負担率に関し合意を形成して行けば良いのではないかと思うわけです。
(2008.11.25)
| 固定リンク | コメント (0) | トラックバック (0)


最近のコメント